個人編


I. 日本及び米国における居住形態とその課税関係

日本及び米国の所得税法上、居住者、非居住者の判定は非常に重要です。いずれの国でも居住者については、居住地国が全世界所得について課税する権利を有し、その居住地国から見て、国外源泉所得につき、その源泉地国において所得税等が課された場合には、外国税額控除制度等により国際二重課税を排除または軽減することとしています。 他方、非居住者とされた場合には、当該非居住者地国を源泉とする所得についてのみ課税されます。従って、どのような所得がいずれの国で課税されるかを考慮する上で、居住形態の判定は欠くことのできない要素です。

1. 日本の所得税法における居住形態の判定
海外支店等勤務のため、日本を出国した場合の居住形態の判定については、その海外支店等における勤務期間が契約等においてあらかじめ1年未満とされている場合を除き、出国の日の翌日から非居住者として取り扱われることとなります 。 また、海外勤務の期間があらかじめ、3ヶ月とか6ヶ月とかの短期間であり、出張程度の場合には、海外で勤務し国内に居住していない期間であっても、日本で居住者として取り扱われることとなります。 この海外での勤務期間が1年未満であるかどうかは、形式基準により判定されますので、例えば出国当初、2年間の勤務期間で出国し、会社もしくは自己の都合により実際の海外勤務が1年未満となったとしても、海外で勤務していた期間は、日本の所得税法上、非居住者として取り扱われることとなります。 尚、社命による研修、視察、留学等の目的で海外に出国する場合には、その研修等のために居住を要する期間は、その居住地に職業を有するものとされ、形式基準である1年基準を適用して、居住形態を判定することとなります。

2. 米国連邦所得税法における居住形態の判定
以下の2つの条件のいずれかを充たす外国籍者は、米国個人所得税法上、米国居住者と見なされます。
 A. 「グリーン・カード」テスト
 移民法により永住移民として身分を持った(つまりグリーン・カードを取得した)米国の合法的な永住居住者は、米国税制上居住者と見なされます。
 B. 実質的滞在テスト(183日ルール)
 外国籍者がその暦年に31日以上米国に滞在し、かつ次の算式に当てはまる場合には、同人はその暦年について滞在第1日目から居住者と見なされます。
      該当年滞在日数 × 1 =
      前年滞在日数 × 1/3 =
      前々年滞在日数 × 1/6 =
                         ≧ 183日
尚、上記183日ルールにより米国居住者と見なされる場合であっても、以下に揚げる外国籍者は、米国以外の国の雇用者から支払われる給与等について、米国での課税を免除される場合があります。
 (1) 一定の条件を充たす留学生及びその家族
 (2) 日米の会社間等による交換制度によって、米国に滞在する留学生、研修生、教師、研究者など一定の専門知識を有する者及びその家族従って、日本の技術者を米国関係会社へ1年程度派遣する場合に、日米両国の税負担も考慮して、Exchange Visitor 制度の導入も検討に値するのではないでしょうか。

3. 日米租税条約における短期滞在者の免税要件
日本の居住者が米国支店や米国子会社への出張、視察などを行う場合、その短期滞在について米国で課税されると、米国と日本との間に二重課税の問題が発生し、煩雑な納税や還付手続きが必要となるため、相互の人的交流の阻害要因ともなりかねません。 そこで、日米租税条約では、以下の要件すべてに該当する短期滞在者については、人的役務の提供地である米国での課税を免除することとされています。
  A. 米国での滞在期間が滞在単位で183日を超えないこと。
  B. その短期滞在者が、法人その他日本に恒久的施設を有する雇用者の使用人であること。
  C. 短期滞在者に対する報酬が、米国に存する恒久的施設により負担されないこと。
1年程度の海外派遣であれば、日本からの出国日や日本への帰国日等を考慮することにより、日米両国の税負担を軽減できる場合が少なくありません。また、長期間の海外転勤の場合にも、給与等の支払い方法を検討することにより、会社にとっては給与コストを軽減でき、尚かつ従業員にも満足のいく給与形態を考えることができます。

II. 米国赴任前の留意事項

米国などへの海外赴任が決まると、ワーキング・ビザの取得、仕事の引き継ぎ、引越し等様々な事柄に時間が取られますが、税務上、特に日米両国における税務費用節減のために、少なくとも以下の諸項目については検討されておく必要があるでしょう。

1. 賞与と支払いと年末調整
日本の居住者である給与所得者について、会社は12月の給与支給時に年末調整を行い、その居住者に他の所得がない限り、この年末調整によりその年度の所得税の課税関係は終了します。ところで、年の中途に給与所得者が海外支店等に転勤したことにより非居住者となった場合にどのような取扱いとなるでしょうか。日本の所得税基本通達190−1では、非居住者となった日を年末と見なして年末調整をする旨定めています。具体的には、出国日前の最終の給与支払いに年末調整を行っておくのが最も簡単なのではないでしょうか。
ただここで注意を要するのは、賞与の取扱いです。通常、出国後に支払われる賞与の金額の一部又は全部は、日本の居住者期間の勤務に係わるものと思われますが、出国後に支払われる賞与のうち、日本源泉所得とみなされる部分については、非居住者に対する源泉所得税率の20.42%が適用され、会社は賞与支給時に所得税を源泉徴収することとされています。
従って、会社では当該賞与金額のうちの日本源泉所得相当額を、その給与所得者が、出国する前に清算した場合の増差税額と出国後に支給した場合の20.42%源泉所得額を比較し、いずれの支給方法が個人及び法人にとって有利となるかを検討する必要があります。
日本の税法上、国内源泉所得の計算については、当該賞与に係わる支給対象期間に基づき、出国日までの日数と出国後の日数により賞与金額を按分します。
尚、米国税法上、米国入国後に受領した賞与については、原則として全額米国においての課税の対象となりますので、この賞与の支払いについては、米国税額をも含めたところで検討されるべきでしょう。出国のタイミングや米国では給与の支給方法にもよりますが、一般的には、日本源泉所得の賞与について、出国前に清算される方が全体としての税負担が少なくなる場合が多いようです。

2. 日本における住民税課税の原則と留意事項
日本における住民税(都道府県民税及び市町村民税)は、退職所得以外の所得については、前年度の所得を基礎にその年の1月1日に住所を有する場所で課税されることとされています。従って、海外勤務により出国する場合など、いつ出国するかによって住民税の負担額が大きく異なってきます。
例えば、2016年12月中に出国し、2017年1月1日に日本に住所を有しない場合には、2016年度の所得に対する2017年度の住民税は課されないこととなりますが、2017年1月に出国した場合には、2017年度の住民税を非居住者となった後も支払わねばならなくなります。
従って、年末年始のいずれかの時期に出国を検討している場合には、その年の12月31日までに出国し、日本での住民税課税を回避されるのが得策と思われます。

3. 赴任期間と税務上の居住形態の検討

 A. 米国での勤務期間が1年未満と予想される場合
 米国で原則居住者として取り扱われるため、米国での実質的滞在テスト並びに日米租税条約における短期滞在者の免税要件を考慮し、米国での課税を避けられるよう、米国への入国日を検討しておく必要があるでしょう。
 B. 米国滞在期間が長期間にわたると予想される場合
 日本国内にある不動産、ゴルフ会員権等の処分と日本での住民税回避、日米両国の課税体系の差異を利用した相続・贈与税対策、米国における持ち家を購入することによる米国所得税対策並びに日本に帰国した時の所得税対策など、様々なタックス・プランニングが検討されるべきではないでしょうか。

4. 日米社会保障協定

米国駐在が5年以内の場合、日米社会保障協定により、米国で社会保障税が免除されます。適用を受けるには、日本の社会保障事務所で適用証明書を取得して、米国の雇用者に提出します。

III. 米国入国初年度および帰国年度の申告形態(Dual Status)

米国への入国初年度及び帰国年度については、いつ入国したかにより、次に挙げる2通りまたは3通りの申告形態のうち、有利な方法を選択することができます。
  1. 非居住者としての申告(Non-resident)
  2. 年間の一部分について居住者として申告(Part-year-resident)
  3. 居住者としての申告(Full-year-resident)

1. 非居住者として申告する場合
 
A. 課税の原則
 米国への入国初年度または日本への帰国年度の米国滞在日数によっては、米国税制上非居住者として取り扱うことができます。こうした非居住者については、米国源泉所得のみが米国で課税対象となるため、米国入国後に受け取る毎月の給料は、日米いずれの国で支払われようとも米国源泉所得として取り扱われます。ただし、賞与については、支給対象期間に基づき米国源泉所得として取り扱われる部分のみが課税の対象とされます。また、日本での受取所得、受取配当金、日本にある不動産の賃貸収入などについて米国の報告義務はありません。
 
B. 項目別控除
 
項目別控除については、米国で購入した家に対する固定資産税、支払利息、医療費控除など非居住者には認められない項目があります。
 
C. 人的控除
 
人的控除について、本人分については全額控除が認められます
 
D. 非居住者の適用税率
 
非居住者として申告する場合には、たとえ既婚であっても夫婦個別申告の税率が適用されます。

2. 年間の一部について居住者(Part-Year-Resident)として申告する場合(Dual-Status)
 
A. 課税の原則
 
米国へ赴任した年及び日本へ帰国した年(暦年)の米国滞在日数が183日以上であるなど、I.2.B.で説明した実質的滞在テストに該当する場合には、その年度(暦年)の一部については、米国税制上居住者として申告することが原則です。
 米国に赴任する場合を例にとってみますと、米国入国前までは非居住者期間となり、米国源泉所得のみが課税対象とされ、米国入国以後は居住者として取り扱われますので、その後の全世界所得が課税所得として取り扱われることとなります。
 尚、その暦年の米国での滞在日数が183日に満たな場合でも、次の3つの条件を満たした場合には、入国より居住者として取り扱うことができます。
   (1)その年度の滞在日数が連続31日以上であること
   (2)その滞在日数の合計が、入国日から12月31日までの合計日数の75%以上であること。
   (3)米国入国年度の翌年に実質的滞在テストを満たすこと。

 
B. 項目別控除
 定額控除は認められておりませんので、申告の際には、項目別控除を選択しなければなりません。

 
C. 人的控除
 
米国居住者期間に係る所得金額を限度として、本人及び扶養家族に対する人的控除を取ることができます。
 
D. 適用税率
 
暦年のうち、一定期間のみ居住者とされる者については、非居住者の場合と同様に、たとえ既婚者であっても夫婦個別申告の税率が適用されることとなります。

3. 年間居住者として申告する場合
年の中途で米国に赴任した者でも、その年の12月31日時点で既婚者かつ居住者である者については、その年度の始めから居住者であったとして、夫婦合算申告を選択することができます。この選択を行った場合には、2..に述べた課税原則は適用されません。

連邦個人所得税の計算過程

連邦所得税申告(Form 1040)上における所得税の計算過程は、次のとおりです。

(1)総所得 Income
●賃金、給与、チップ等
●利子収入
●配当収入
●過年度州税還付金(前年度で項目別控除を受けた場合のみ)
●離婚、別居手当(受取)
●事業所得
●譲渡所得(不動産、有価証券)
●不動産所得
マイナス  
(2)調整総所得前控除 Before AGI Adjustment
●個人退職金の掛金(IRA)
●定期貯金の早期解約違約金
●離婚、別居手当(支払)等
●引越費用(旅費・運送費のみ)個人負担分
●学費
イコール  
(3)調整総所得 Adjusted Gross Income
 
マイナス  
(4)定額控除 Standard Deduction
(4)項目別控除 Itemized Deduction
●医療費(AGIの10%を超える部分)
●州所得税、地方税、固定資産税等の支払
●持ち家(セカンドハウス)に係わる支払利息
●寄付金
●その他(AGIの2%超過分についてのみ控除可のもの有)
 
マイナス
(5)人的控除 Exemption

●一人原則$4,050(2016年)

 

マイナス
(6)課税所得
Taxable Income
× (7)税率
Tax Rate
(8)税額控除
Tax Credit
(9)支払税額
Tax Payment

[ 支払税額 − (源泉所得税 + 予定納税額 + 過払い社会保障税) ] = 確定税額 or 税金還付


IV. 米国所得税法上の所得項目

1. 米国駐在員の給与・諸手当とその課税関係
 
A. 住居手当
 
駐在員の米国滞在中の家賃を会社が支払う例がよく見られますが、通常、会社の支払った家賃の全額が駐在員の給与として課税されることとなります。尚、会社が直接家を有し、その家を駐在員に貸し与えているような場合にも、適正な家賃額がその駐在員の給与として課税されることとなります。
 
B. 家賃等のリース
 
駐在員がアパートなどに入居する場合、家具を買いそろえるまでの一定期間、家具のリースを受ける場合が少なくありません。会社がこうしたリース費用を支払った場合にも、その支払いは、駐在員の給与として課税されることとなります。
 
C. 水道光熱費
 
アパートに入居する場合、水道光熱費は家賃に含まれている場合も多く見られるところですが、テナントが負担すべき水道光熱費について、会社が支給した場合には、その支給金額は駐在員給与として課税されることとなります。
 
D. 諸手当
 
尚、上記の様々な支出を一括して諸手当として給与額に加算し、そこから実際の会社支給額をマイナスする形で源泉徴収事務手続きを簡便化する例も見られます。この支給額も駐在員の給与として課税されます。
 
E. 海外勤務手当
 
海外勤務に伴う支出の増加を補うために支払われる手当で、当然課税所得を構成することとなります。
 
F. 転勤費用と宿泊費用
 
日本から米国への転勤に際し、本人・家族の航空運賃、旅費、移動中の宿泊や家財道具等の運送料などの転勤費用が生じることとなります。これらの費用は、一般に会社が全額負担しているのが通常です。米国での所得税の申告上、航空運賃、旅費と家財道具の運送料を除く転勤関連費用の会社負担分は、所得として取り扱われ、W-2(米国での源泉徴収票)の金額に含まれることとなります。
 
G. ホーム・リーブ
 
日本人駐在員に対し、一定期間毎に日本への休暇帰国を認め、その時の航空運賃、旅費、移動中の宿泊費を会社が全額負担する場合が見受けられます。こうした一時帰国をホーム・リーブと呼んでいますが、こうしたホーム・リーブに係る費用を会社が負担した場合、その支出は個人の給与として取り扱われ、また、源泉徴収の対象ともされます。
 H. 会社が負担した個人の税金等
 
米国など海外で勤務する日本人駐在員に対し、会社が一定の手取額を保証し、本来個人が負担すべき連邦税・州税・地方税及び社会保障税を会社が全額負担する場合などがみられます。このように、会社が負担した税金は、当然のことながら、個人の所得を構成することとなります。
 I. カンパニー・カー
 
米国駐在員に対し、会社所有の車を貸し与えることがよく行われていますが、カンパニー・カーの個人的な使用は、給与とみなされます。尚、通勤も個人的使用とみなされます。カンパニー・カーの個人的使用としてみなされる金額の算定は通常次の方法により行われます。
適正リース料基準法
 
従業員にカンパニー・カーを個人使用のために貸与した日の適正市場価額を算定し、IRSが公表する年間リース料率換算票に照らして年間リース料を求めます。この年間リース料を以下の算定で個人使用分に按分し、給与として課税します。

経済的利益 = 年間リース料 ×
個人使用走行距離

総走行距離

  尚、カンパニー・カーの貸与が年の中途開始又は停止された場合には、年間リース料を貸与開始日から年末又は年始から貸与停止日までの日数に基づいて按分し、その後、個人使用部分の算定を行うこととなります。また、この年間リース料は、4年リースを基準として算定しておりますので、貸与開始から4年間は年間リース料は変更しません。

2. 利子・配当所得
利子・配当所得、年金収入及びロイヤリティ収入は、他の所得と区別してポートフォリオ・インカムと呼ばれることがあります。こうしたポートフォリオ・インカムを生じる元本を取得・保有するために要したとみなされる借入金に係る支払利息は、インベストメント・インタレストと呼ばれますが、利子・配当所得の金額までの控除が認められます。尚、免税扱いとされる地方債等に係る支払利息の控除は認められません。また、これら支払利息の控除は、後で説明する項目別控除を選択した場合にのみ認められますので、申告する際には、定額控除との有利・不利も考慮しなければなりません。

3. 譲渡所得
 
A. 有価証券等の売却益
 
その課税年度に行われた売却により実現した売却益と売却損を相殺して算定された金額が、利益(Capital Gain)になった場合には、その金額が課税対象となりますし、逆に損失(Capital Loss)となった場合には、最高3,000ドルまで他の所得と相殺することができます。こうしたキャピタル・ロスがその年度で控除しきれなかった場合には、キャピタル・ロスを使いきるまで何年でも繰り越すことができます。
 
B. 自宅の売却益の非課税上限
 
自己の保有する不動産の売却により生じたキャピタル・ゲインも他の所得と同様、課税の対象となりますが、納税者自身が住んでいる主要な住居(Principal Residence)を売却した場合には、夫婦で50万ドルを上限に控除されます。

4. 不動産所得
不動産の賃貸に係わる所得は、家賃収入から支払い利息、固定資産税、損害保険料、管理費、修繕費、減価償却等を差し引いて計算しますが、不動産投与の当初は、損失となる場合が少なくありません。
不動産投資から生じる損失は、米国税制上、パッシブ・ アクティビティ・ロスと呼ばれており、他の所得との損益通算は認められておりません。ただし、個人の場合で、かつ、調整総所得金額(AGI)が100,000ドル以下の場合には、不動産損失のうち25,000ドルまで他の所得との損益通算が認められています。ただし夫婦個別申告の場合、年間を通して別居していた者を除いて、この損益通算は認められません。また、所得が増加するにつれて、この控除可能限度額の25,000ドルは減額されていき、AGIが、150,000ドルを超える場合には、たとえ不動産損失があったとしても、他の所得との損益通算は認められなくなります。
尚、この不動産投資から生じる損益を他の所得と損益通算するためには、不動産所有者が次のような判断を下すことが条件とされています。

  
新しいテナント入居に対する許可
  
賃貸期間
  
修繕等に係わる支出の許可
  
上記と同様の判断

V. 所得控除と税額控除

米国税法上、控除項目は、AGI算定のために総所得から控除されるもの(Before AGI Adjustment)、定額控除または項目別控除(Standard Deduction or Itemized Deduction)、人的控除(Personal Exemption)、税額控除(Tax Credit)の4種類に大別されます。

1. 調整総所得前控除(Before AGI Adjustment)
いくつかの控除項目が申告書上あげられていますが、ここでは日本人駐在員に関係しそうな項目のみ説明いたします。
 
A. 個人退職年金口座(Individual Retirement Accounts)
 
IRAは、個人が銀行等で個人名義で開設する退職年金口座です。会社の401(k)プランや退職金制度に加入する資格がない場合、あるいは一定の所得金額以下の個人で個人的にIRAを購入した場合には、次の金額までの掛金について所得から控除することが認められています。

 

申告形態 
限度額
本人のみ 5,500ドル
本人および配偶者 11,000ドル
(50歳以上は一人$1,000加算が可能)

ただし、日本人駐在員の給与水準及び口座の早期解約に係る罰金などの関係で、日本人駐在員の中でこの制度を利用している方はあまりいないものと思われます。
 
B. 定額預金等の早期解約違約金
 
定期預金などを満期日到来前に解約した場合に違約金を取られる場合があります。この違約金は、銀行から送付されてくるForm 1099-INTに記載されて来ることになっていますが、この違約金は所得からの控除が認められています。
 
C. 離婚・別居手当
 
離婚または別居中の相手に支払う手当です。尚、受け取ったものはそれを所得として申告することとされています。
 
D. 引越費用の個人負担分
 1995年から引越費用(旅費・運送費のみ)の個人負担分は、所得控除ではなく調整総所得前控除の項目になりました。

2. 定額控除(Standard Deduction)
定額控除方式の場合には、その申告身分によって以下の金額が認められます。

申告形態    
2016年
   
夫婦合算申告または一定の条件を満たす寡婦または寡夫 12,600ドル
夫婦個別申告 6,300ドル
世帯主 9,300ドル
独身者 6,300ドル

3. 項目別控除(Itemized Deduction)
申告書作成上、定額控除と項目別控除のいずれを選択するかは、納税者の選択によりますが、次の場合には、項目別控除を選択しなければなりません。
  
夫婦個別申告を行っている場合で、一方が項目別控除方式を採用した場合のもう一方の配偶者の控除方式
  
居住者の場合、および居住期間が1年に満たない年度(入国年度及び帰国年度)の場合
  項目別控除の代表的な例は、以下の通りです。

 
A. 医療費
 保険などでカバーされていない医療費、薬代等の合計がAGIの10%を超える場合に、その超過額が控除の対象として認められます。

 
B. 支払税金
 州及び市に支払った所得税(またはセールス税)、固定資産税、動産税など実際に支払った税金と日本の住民税等で外国税額控除の対象にしなかった場合には、控除をとることができます。
 
C. 支払利子
 
住宅2軒分までの住宅ローンに係る支払利息が、全額控除の対象となります。ただし、ローン合計が1,000,000ドルを超える場合には、当該超過部分に係る支払利息は控除できません。また住宅を抵当にしての、いわゆるエクイティ・ローンは100,000までが控除対象となります。(ただし夫婦個別申告の場合は、ともに上記の半額までが控除対象です。)
 
D. 慈善寄付金
 宗教、慈善、科学、文学、教育、アマチュア・スポーツ競技の育成などの目的で設立された組織で、慈善団体として米国で承認を受けた者に対する寄付が控除の対象となります。
 E. 業務関連経費その他控除可能項目
 
その他項目別控除の対象となるものには、その合計額がAGIの2%を超える部分に限定されているものと、支出金額がそのまま項目別控除の対象となるものの2つのグループに区分されます。
 (1)2%基準適用項目
 業務関連経費のうち、会社から返済を受けなかった金額で以下に挙げる項目

  
旅費、交通費(通勤に係るものを除く)、食事代、交際費(食事代は、原則50%部分のみ控除可)
  
組合費
  
仕事で必要とする文房具その他の消耗品費
  
会社から着用が義務づけられた制服等で普段は着用しないもの、仕事の必要上着用する安全靴、安全帽、安全服代)
  
会社の要請による身体検査費
  
専門団体や商工会等に対する会費
  
業界雑誌の購読料
  
仕事を維持するために必要とされる教育費で、会社または法令により受講が要請されたもの
  
税務申告書作成費用
  
貸金庫の使用料
  
一定の専門家報酬
  
受託手数料など
 (2)2%基準適用除外項目
  
ギャンブル上の損失、ただし、ギャンブルで得た利益額を超えないこと
  
故人の所得に課せられる連邦遺産税額など
これらA.からE.の各控除項目ごとの合計額が、項目別控除方式での控除額となります。 (収入が多い場合、控除額が制限されます。)

4. 人的控除(Personal Exemption)
 A. 控除金額及び扶養控除の条件
 
納税者自身、配偶者及び扶養家族等につき、1人当り4,050ドル(2016年)の控除が認められています。(収入が多い場合、控除額が制限されます。)
 また、扶養家族等人的控除の対象者は、以下に挙げる5つの条件に該当する者をいいます。
  (1)被扶養者の年間総所得が4,050ドル(2016年)以下であること。ただし、当該被扶養者が納税者の子供で、19才以下又は24才未満の全日制の学生の場合はその限りではありません。
  (2)被扶養者の年間生計費の半分以上を納税者が提供していること。ただし、離婚した夫婦、2人以上で扶養する契約がある場合を除く。
  (3)子、孫、兄弟、両親、祖父母、兄弟の子供、両親の兄弟などの親族もしくは、課税年度を通じて、家族の一員として納税者と暮らしている者。
  (4)被扶養者が既婚者の場合、夫婦合算申告書を提出していないこと。
  (5)被扶養者は、米国市民、米国居住者、カナダもしくはメキシコの居住者であること。
 従って、日本人駐在員で米国へ単身赴任して来た人については、たとえ家族の生計費の50%以上を負担していたとしても、人的控除を取ることはできません。
 また、人的控除については、居住者と非居住者ではその取扱いが異なりますので、注意が必要です。

5. 支払い税額の確定
 
A. 申告形態
 
申告形態(Filling Status)は、次の4種類に区分されており、それぞれ異なる税率表により税額を計算することになっています。
  (1)独身(Single)
  (2)夫婦合算申告又は寡婦(寡夫)申告(Married Filing, Joint Returns or Surviving Spouses)
  (3)夫婦個別申告(Married Filing, Separate Returns)
  (4)世帯主(Heads of Household)

 
B. 税額控除
 最も一般的な税額控除項目としては、外国税額控除(Foreign tax credit)があげられます。日本人駐在員の場合では、米国赴任後も一定期間、住民税を支払うことになるでしょう。こうした住民税等については、米国での申告上外国税額控除の対象になると考えられます。
また1998年から始まった子供税額控除(子供一人につき1,000ドル − 2016年)や教育関係の控除も忘れることはできません。

 
C. 最終支払税額の算定
 
税率表に当てはめて計算した税額から、各種税額控除を差し引いた金額がその年度の支払税額です。ただし、給与等の金額からは、一定金額の源泉徴収がなされていますし、他に所得がある場合には、予定納税により一部税金の支払いがなされているものと思われます。また、2ヶ所以上から給与の支払いを受けている場合など、社会保障税の上限金額以上に源泉徴収されている場合も考えられます。この過払社会保障税も、税金の予納とみなされますので、源泉税額、予定納税額及び過払社会保障税額をその年度の支払い税額から控除して最終支払税額を算定します。尚、最終税額がマイナスすなわち、還付になる場合もありますが、当該還付税額については、そのまま還付を受けるか、翌年度の予定納税額に充当するいずれかの処置をとります。

VI. 給与に係わる源泉徴収手続きと予定納税

1. 連邦税(Federal Tax)
従業員に対する給与は、原則として源泉徴収の対象となりますが、ここでいう給与には、現金で支払われるものばかりでなく、従業員が受ける経済的利益も含まれています。
源泉徴収の方法としては、一定の算定から税額を求める方法と源泉徴収額表から税額を求める方法が主に使われています。源泉徴収の方法にかかわらず、源泉徴収税額は、給与の額、扶養者の数、結婚の有無及び給与の支払い期間によって異なってきます。
従って、源泉徴収が適正になされるために、扶養者数等の控除に関する資料として、Form W-4を雇用者に対して提出することとなっています。このFormの提出を怠った場合には、独身者で何の控除もないという前提で源泉徴収が行われることとなります。
尚、経済的利益については、毎月源泉徴収するのではなく、少なくとも年1回にまとめて源泉徴収する取扱いも認められています。この場合に使用する源泉税率も、他の所得とは別 に25%を使用することも認められています。実務上、経済的利益については、他の所得と区別 するため、Form W-2(源泉徴収票)を別に発行する場合もよくみられます。

2. 州税及び地方税(State and Local Income Tax)
州税及び地方税についても給与から源泉徴収されることとなります。米国では、州によって所得に対する税率が異なっており、一概にはその源泉徴収方法について言えませんが、一般的には連邦税での源泉徴収と同様の方法がとられているようです。州税及び地方税の源泉徴収税額も、連邦税の場合と同様にW-2に記載されますので、年間支払額についてはW-2に明確に反映される必要があります。

3. 社会保障税(FICA Tax)
日米社会保障協定により、5年以内の駐在員は米国で社会保障税を払わなくても良くなりました。以下はそれに該当しない場合や手続をしていない場合です。

給与所得については、連邦税、州税、地方税の源泉徴収に加えて、社会保障税も源泉徴収されることとなっています。社会保障税については、雇用者、被雇用者がそれぞれ同額ずつ負担することとされていますので、雇用者は被雇用者から源泉徴収した社会保障税と同額を内国歳入庁宛に払い込みます。
FICA Taxは年金関連と医療関連の二つの部分がありますが、前者については、一定の金額以上の給与には課されないこととされております。この上限所得の金額と税率は毎年変更されますが、2016年は以下の通 りになっています。

  税率 上限所得額 上限税額
年金関連 6.20% $127,200 $7,886.40
医療関連 1.45%  
合計 7.65%    
(2017年)      

雇用者、被雇用者の両者とも、上記税率による納税義務があります。
米国に居住する日本人が受け取る給与は、原則として日本で支払われたものも含めてFICA税の対象となってきます。また、このFICA税は源泉徴収によってのみ納税が可能となるため、手続的には煩雑さが生じます。というのは、日本法人がForm 2678をIRSに提出し、かつ、雇用者の負担すべきFICA税の支払を行わなければならないことになるからです。こうした事務手続き上の煩雑さを避けるために、米国雇用者が前もって計画的にその日本人の給与から連邦税・州税とともにFICA税も源泉徴収しておき、日本法人がFICA税を支払わなくともすむ様な方策を講じておく必要があります。

4. 予定納税(Estimated Tax)
連邦税上、その年度の支払税額の90%以上または、前年支払税額と同額以上を源泉徴収もしくは予定納税により納付していることを要求していますが、給与所得以外の所得がある場合には、その所得に係る税額について予定納税をしておく必要が出てきます。
予定納税は、4月15日、6月15日、9月15日そして翌年1月15日の計4回に分けて行われます。

VII. 源泉徴収及び予定納税に係わるペナルティ

1. 雇用者に対するペナルティ
 
A. Sec. 6672
 従業員の給与から源泉徴収を行うこととされている雇用者は、実際に源泉徴収したかどうかにかかわらず、源泉徴収税額を納付する義務があります。ただし、従業員が源泉対象の所得に対する租税債務を支払った後には、雇用者の納税義務は消滅することになります。雇用者が故意に源泉徴収や政府への支払いを怠った場合には、当該源泉税額と同様(100%)のペナルティが課せられることとされています。
 
B. Sec. 6656
 
雇用者が源泉徴収税額の一部又は全部を納期限後に納付した場合には、実際までの支払日数により、次の金額がペナルティとして課せられます。

納期限から支払日までの日数 ペナルティ金額

5日未満 未払税額の2%
5日以上・15日未満 未払税額の5%
15日以上 未払税額の10%

 尚、延滞通知が発送されて10日以内、もしくは通知に記載された支払期限のいずれか早い日までに支払いがなされなかった場合には、未払税額の15%がペナルティとして課税されます。
 C. Sec. 6621(a)
 
不足税額に対する利子税率は、Federal Short-Term(Adjusted Quarterly) rateに3%をプラスしたレートを使用して計算します。尚、この利子率は、四半期ごとに変更されます。

2. 個人に対するペナルティ
 A. Sec. 7205(a)
 
Form W-4記載上、故意に虚偽の申告をした場合には、1,000ドル以下の罰金又は(及び)1年以内の禁固刑に処される場合があります。
 従業員が毎月の源泉徴収税額を減少させるために合理的な理由もなく、Form W-4の扶養控除等の数を記載した場合には、その従業員は500ドルのペナルティを支払わなければならないこととされています。(Publication 17)。

 
B. Sec. 6621 不足税額に対する利子税
 
予定納税額が過少納付となった場合には、納期限から実際の支払日までの期間についてFederal Short-term-Adjustment Quarterly(IRSが公表している)のrateに3%をプラスしたレートを使用して利子税を計算します。
 ただし、翌年1月31日までにその年度に係わる申告書を提出し、確定税額も納付した場合は、上記予定納税に係るペナルティは回避できることとされています。
 また、その年度の支払い税金から源泉徴収税額を差し引いた金額が1,000ドル未満であれば、予定納税に係るペナルティは課せられません。同様に、源泉徴収税額と予定納税額の合計額が、その年度の支払税金の90%以上、もしくは、前年度支払税額の100%(高額所得者は110%)以上であれば、通常この不足税額に係るペナルティは回避できます。

 C. Sec.6651 申告または支払いに対する罰金
 
申告期日までに申告がなされなかった、あるいは遅れた時、1ヶ月以下の場合は支払額の5%の罰金、それ以上は1ヶ月5%づつの増加で最高25%の罰金が課せられます。
 支払の遅れに対しては、1ヶ月以下の場合0.5%それ以上は1ヶ月0.5%づつ増加、最高は2.5%の罰金が課せられます。

VIII. 日本人駐在員の給与決定の方法

通常在米日系企業は、米国駐在日本人の給与を「ネット保証方式(Tax Protection又はTax Equalization)」又は「グロス保証方式」のいずれかの方法により決定しています。

1. ネット保証方式
この「ネット保証方式」は、米国での個人所得税、地方税、社会保障税等差引後の純手取額を一定の金額となる様保証するものです。この一定金額には、多くの場合、基本給に加えて住宅手当、家族手当、海外勤務手当等がその対象となります。この給与決定方式は米国では一般的にプロテクション方式と呼ばれているものですが、その言葉通り、雇用主が一定の純手取金額を保証するために必要な全てのコストを負担するものです。従って、連邦及び州個人所得税、地方税および社会保険等本人が負担すべき税金は、すべて会社が負担することになりますので、これらの税金相当額は従業員の所得と見なされます。会社はこの追加給与を個人の所得に加算すると同時に同額を源泉徴収または見込納税することとなります。このプロセスは、通常「グロス・アップ」と呼ばれます。
「ネット保証方式」は、このグロス・アップによる追加給与コストのため在米日本企業に多大な費用負担の増加をもたらします。これは在米日本人駐在員が中間管理職および一般従業員である場合、この所得層の納税者の米国における全ての納税コストを合算した実行税率が日本のそれを超えるために特に顕著となります。結果的には会社は二国間の税負担額の差額及びその税金に課される税金を支払うこととなるわけです。
もう一つのネット保証方式として「税務コスト均等処理方式(Tax Equalization)」があります。プロテクション方式が、従業員が損をしないように、プロテクト(保護)するのに対して、Equalization方式では、従業員が得もしないように、一定のルールに基づき、労使間で税金負担を配分して、最終的にEqualizeさせようとするものです。

2. グロス保証方式
「ネット保証方式」に対し、「グロス保証方式」とは在米日本人駐在員に給与総支給額を保証する方法です。この給与総支給額は通常「ネット保証」の保証手取額を計算する際に考慮される手当等とそれに伴うであろう税務コストを含みます。
この方式は商社等、米国において事業歴の長い会社の多くが採用しています。又、米国駐在日本人会社役員、現地採用者、長期滞在者、あるいは米国永住権を持つ日本人の多くがこの方式により給与計算されています。この方式により給与計算をされた場合、全ての税務コストを最終的には個人的に負担することとなりますが、節税効果、税金の還付当については会社から制限を受けません。


ビジネス編

ビジネス開始時において必要な書類

連邦法人番号申請 (Form SS-4)
州総合登録申請
 
Washington, D.C. (Form FR-500)
 Maryland (Form COM/RAD−093)
 Virginia (Form R-1)

Virginia − 郡のビジネス免許登録
社会保障番号申請 (Form SS-5
納税者番号申請 (Form W-7)
非営利団体...免税承認申請
 連邦 (Form 1023)
 Washington, D.C. (FR 164)
 Maryland (連邦のコピー)
 Virginia (連邦のコピー)

外国証明書(Form W-8BEN, W-8ECI)

年間を通 じて必要な書類

給与関係
 連邦 (Form W-4, 8109, 941, 940, W-2, W-3)
 Washington, D.C. (Form D-4, FR-900M, FR-900A, FR-900B, UC-30)
 Maryland (Form DLLR/OUI 15/16, MW 506, MW 507, MW 508-MW508A)
 Virginia (Form VA-4, VA-5, VA-6, VA-15, VA-16, VEC-FC-20, VEC-FC-21)

州売上、使用税
 Washington, D.C. (FR-800M, FR800A

 Maryland (Form COT/ST-118)
 Virginia (Form ST-6)

1年に1度必要な書類

支払報告書 (Form 1099-MISC)
連邦法人所得税申告
 支店、連絡事務所 (Form 1120F)
 現地法人(Form 1120)

外国法人情報申告 (Form 5471, 5472)
従業員の福利厚生関係費用の計画に関する報告書(Form 5500)
州法人所得税
 Washington, D.C. (Form D-20)
 Maryland (Form 500)
 Virginia (Form 500)

州、動産税申告
 Washington, D.C. (Form FP 31)
 Maryland (Form 1)
 Virginia (Form 762)

パートナーシップ所得申告
 連邦 (Form 1065)
 Washington, D.C. (Form D-30, D-65)
 Maryland (Form 510)
 Virginia (Form 502)

連邦個人所得税申告 (Form 1040)
外国銀行口座報告書(Form FinCEN 114)
非居住者への支払いに関する源泉申告 (Form1042)
 非居住者への支払いに関する源泉報告 (Form 1042S)

非居住者への支払いに関する源泉報告 (Form 1042T)
州個人所得税申告
 Washington, D.C. (Form D-40)
 Maryland (Form502)
 Virginia (Form 760)

免税団体申告
 連邦 (Form 990)
 Washington, D.C. (連邦のコピー)
 Maryland (連邦のコピー)
 Virginia−無

Virginia郡のビジネス免許税
 Arlington (CR-L3)
 Fairfax (Form 8TA-E1)

* 以上は全て原則の一部です。具体的な状況の対応に関しては、専門家にご相談ください。